- 地車文献 feat. 泉州物語 平成21年11月号 -
- 200911/23 -
古来の伝統をつむぐ岡田新調やぐら 泉南市西信達地区岡田中組 平成21年9月13日、116年の時を経て新調やぐらの御披露目入魂式が無事執り行われた岡田中組。 岡田は元来、海側(岡田浦)の岡田区と山側(上岡田)の陸区に分かれており、南海電車浜手の街道が岡田区にあたります。現在、岡田区は一町で三台のやぐらを所有しており、その独特の太鼓、明笛など長くゆっくりした音頭には岡田独特のものが多く、岡田区がやぐら分がの中でも独自の足跡を辿ってきたことが推測されます。 先代やぐらは明治25年、地元:廻船問屋が集まって費用を工面し、大工:不詳、彫刻:美濃村松雲(小松十代目)によって製作され、部材には上質の赤欅が使用されております。 しかし、長年の曳行による老朽化が進み、危険度が高まることを考慮し、町会は修理を決定するも、各部に手を入れると新調に匹敵する費用がかかる為、各関係者の同意を得て新調に踏み切りました。 平成18年に原木祭が行われ、3年かけて完成されたこのやぐらは、大工:池内工務店、彫刻:野原湛水師により製作され、小屋根桝間(桝合)に見送り形式を採用。腰廻りの板高欄は三枚板で彫られ、幣持ち(番号持ち)「豊臣坐像 豊国神社」に見られるように彫物は太閤記で統一されております。 しかし、小屋根に配置される里外神社にちなんだ「後鳥羽上皇に鰈を献上す」や、木鼻「鯛を掴む唐獅子」は岡田区独特のもので、ここ岡田浦が古くから漁師町として発展してきたことを表す町の誇りが感じられます。 |
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岡田の伝統を最も守り継ぐやぐら 泉南市西信達地区岡田西組 諸説あるものの、やぐらは元来だんじりと同じ祖を持つとされますが、その伝達経路に違いがあり、京都→奈良→和歌山を通って大坂南部へ辿りついたと云われております。そして紀伊山脈を跨ぐ頃に、当時の道路事情により四輪から二輪へ形態が変更したとされており、ここ岡田含め、泉南にやぐら文化が根付いたのは泉州にだんじりが伝わったおよそ50年後のことだとされます。 現在の西信達地区の岡田三台(西組・中組・北組)の中で最も古い岡田西組は大正5年、大工棟梁に大寅こと若野寅太郎師を迎え、彫師には岡田中組先代やぐらと同じく名門美濃村五兵衛の跡目養子にして小松十代目・美濃村松雲師により製作されました。 先代は明治26年製作で、大工・不詳、彫物は現在と同じく美濃村松雲師の手によるものです。この先代は大正5年の当代新調に合わせ、泉南市陸区宮本(くがみやもと)に売却されましたが、平成20年より岬連中南組にて曳行され、今も南大阪の祭礼の発展に一躍担っています。 岡田所有のやぐらは、西組(西出)・中組(中組)・北組(北出)の順に「岡田壱号」「岡田弐号」「岡田参号」とも称されておりましたが、平成16年の岡田北組新調に合わせて、現在の「岡田西組」「岡田中組」「岡田北組」へと統一されております。 ある関係者の方によると、岡田において最も区民達と同じ時間を過ごしたこの西組も近年は老朽化により傷みが激しくなってきており、ゆくゆくはこの西組やぐらを新調し、北組、中組と合わせて新しい岡田やぐら三台を皆様にお見せできればと語ります。 |
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岡田三台やぐら復活の原動力 泉南市西信達地区岡田北組 岡田北組のやぐらは、これまで様々な地区からやぐらを購入していましたが、阪南市新町より購入した先々代(ヒノキ)が室戸台風により小屋ごと倒壊してしまい、已む無く曳行休止、その後解体となり長らく曳行されていませんでした。 その後、岡田区内では、西組・中組のみの二台曳行が続いていたのですが、昭和50年代後半に有志が立ち上がりやぐら保存会を発足。古来より受け継がれし岡田三台の祭礼を北組の曳行と共に復活させようという念願の計画が動き出しました。そして遂に、年号明けて平成2年、阪南市石田宮本よりやぐらを購入。これが先代岡田北組となり、岡田の地に晴れて三台のやぐらが復活しました。この先代やぐら(ヒノキ)は大正5年に、大工:貴田虎次郎、彫師:相野卯三郎師の手により石田宮本にて新調され、当該地では上のやぐらとして曳行されてました(当時、石田宮本は上下の二台)。そして、平成14年9月29日の昇魂式をもって岡田北組としての役目を終え、平成15年から岬町岬連中北組によって現在も曳行されております。 当代の岡田北組やぐらは当地において岡田西組以来の新調やぐらということもあり、平成16年9月19日に盛大な入魂式が行われました。大工棟梁:畑谷建設、彫師には筒井一門を迎えたこのやぐらは、上だんじりを彷彿させる獅噛、下(岸和田型)だんじりに優るとも劣らない美しい桝組・桝間(桝合)を併せ持ち、見る者を惹き込む世界観を感じさせます。これからもこの三台のやぐらを含め、南大阪のやぐら文化を後世に伝えていってくださる事を心よりお祈りしております。 … ご挨拶 今回、泉州物語に岡田区の「やぐら」を掲載していただくことになりました。 まず、岡田区の紹介をさせていただきます。大阪府の南部泉州地域に属し、泉南市の北に位置する人口約4300人、世帯数1400軒の町です。旧藩時代、岸和田藩に属し、明治4年11月、廃藩置県の際、堺県に属した。明治5年、行政区画の決定に伴い、和泉の國二十五区内の二十三区に属し、泉州日根郡岡田村と言われた。南海電鉄が岡田に駅を設置した際、駅名を岡田浦としたのは、旧藩時代、泉州十八浦のひとつで、岡田浦と呼ばれていたからである。 古くは岡田は上(ウワ)岡田(陸区)と下(シモ)岡田(岡田区「北出」「中出」「西出」)からなっていた。明治初めから昭和40年頃までは「番曳き」が行われていて各町(北出・中出・西出)で、やぐらを管理し「番曳き」していた。 さて岡田の「やぐら」ですが、現在は北組・中組・西組と呼ばれています。 一つの町に三台のやぐらがあるめずらしい地区になっています。 じつは、岡田区、岡田やぐら保存会、岡田青年團が切望していた新調やぐらを、平成16年9月に一台新調(北組)しました。 そして今年、平成21年9月13日に二台目やぐら(中組)が無事完成し、入魂祭(入魂式・お披露目曳行)を挙行したばかりです。当日は泉南市長様はじめ衆議院議員、府議会議員、市議会議員各位並びに区民の皆様にもご臨席いただき盛大な入魂式を行うことができました。紙面をおかりし、お礼申し上げます。そして、いつかは三台目のやぐらも新調できるよう祭礼関係者一同努力してまいります。 岡田やぐら保存会(世話人・若頭・参拾人組・青年團・少年団)は、皆様に見に来ていただける秋祭りを目指しています。本年、10月4日には西信達連合曳き(やぐら五台)を「りんくう南浜」で行います。 そして、宵宮の10月10日夜には泉南市のオークワで西信達連合パレードを行い、本宮の10月11日には、氏神である里外神社に宮入を行います。鳥居をくぐってから本殿まで走る、勇壮で見ごたえのある秋祭りを、ぜひ見に来てください。 また、岡田には、他所ではない音頭があります。伊勢音頭のくずしですが、短い音頭もあれば長い音頭もあります。そして、今まで、岡田のやぐら三台の法被は同じ柄でしたが、二台目やぐら新調に伴い、やぐら保存会、青年團の法被を一新しました。各組ごと由来ある紋を入れた法被です。 最後になりましたが、泉佐野市以南、田尻町吉見、泉南市、阪南市、岬町の「やぐら祭り」の魅力を皆様にしっていただくため、微力でありますがこれからも努力してまいります。 平成21年10月吉日 岡田やぐら保存会 会長 太佐傳 |
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泉南市西信達地区 岡田中組 【大屋根】 ・箱棟 − 雲に青龍 ・枡間 − 正面:北野大茶会、 右面:秀吉 屈辱を忍ぶ、 左面:大徳寺 焼香の場、 後面:秀吉 辞世の句を詠む ・車板 − 正面:恵比寿、 後面:スサノオ 八岐大蛇退治 ・欄間 − 正面:清洲会議、 右面:高松城 水攻め、 左面:長浜城 初城主、 後面:清洲城 割普請 ・幕板 − 右面:佐久間玄蕃 秀吉本陣に乱入、 左:尼崎危難 ・枡間天井 − 平:四獣神 【小屋根】 ・箱棟 − 波に玄武 ・枡間 − 三面:本能寺の変(見送り形式) ・車板 − 後鳥羽上皇に鰈(カレイ)を献上す ・欄間 − 右面:秀吉 草履取り、 左面:日吉 小六 矢作橋の出会い ・幕板 − 右面:秀吉 富士川の初陣、 左面:加兵衛 危急を救う ・枡間天井 − 平:四獣神、 妻:雲に龍 【腰廻り】 ・板高欄 − 三面:中国大返しから山崎の合戦 ・内高欄 − 関白祝賀の宴 ・縁葛 − 三面:賤ヶ岳の大合戦 ・脇障子 − 左右:御代乃若餅 ・小脇板 − 右:小牧長久手の戦 豊臣方、 左:小牧長久手の戦 徳川方 ・太鼓ぐるり − 左右:鯉の瀧登り、 上:醍醐の花見 ・高欄間 − 秀吉誕生から永眠まで 【後腰廻り】 ・板高欄 − 右面:金ヶ崎の退口、 左面:小谷城 虎口抜け ・縁葛 − 右面:長短槍試合、 左:前田利家 ・幣持ち − 豊臣坐像 豊国神社 岡田中町より資料提供 … 泉南市西信達地区 岡田西組 【大屋根】 ・懸魚 − 正面:鳳凰、 背面:飛龍 ・車板 − 正面:平景清 錣引き ・虹梁 − 雲海 ・柱巻 − 右:昇り龍、 左:降り龍 ・小脇板 − 右:新田義貞従者、 左:新田義貞稲村ヶ崎 投剣の場 ・幕板 − 右:鷺池平九郎 勇戦、 左:那須与一 扇の的を射る ・犬勾欄 − 波に千鳥 【小屋根】 ・懸魚 − 松に鷲 ・枡合 − 正面:児島高徳 櫻木に歌を詠む、 右面:楠正成 後醍醐天皇に拝謁す、 左面:村上義光 錦の御旗奪還 ・幕板 − 右面:義経を追う平教経、 左:源義経 八艘飛 ・板勾欄 − 左右:楽器遊び 阪南市の祭・やぐらより抜粋 … 泉南市西信達地区 岡田北組 【正面】 ・懸魚 − 鳳凰 ・車板 − 夫婦岩初日之出 ・桝間 − 天之岩戸 ・欄間 − 富士の巻狩り 源頼朝本陣 ・柱巻 − 左右:昇竜・降竜 ・小脇板 − 右:児島高徳 櫻木に赤誠を記す 左:新田義貞 金造りの太刀を竜神に捧ぐ ・犬高欄 − 左右:牡丹に唐獅子 ・内高欄 − 賤ケ岳の合戦 加藤清正、山路将監を討つ ・板高欄 − 右面:賤ケ岳の合戦 片桐且元の勇戦 左面:賤ケ岳の合戦 加藤嘉明の勇戦 ・縁葛 − 牡丹に唐獅子 【後面】 ・前屋根懸魚 − 鷹 ・前屋根車板 − 雲海 ・前屋根桝間 − 神功皇后説話 応神天皇平産す ・後屋根懸魚 − 雲龍 ・後屋根車板 − 風神・雷神 ・後屋根桝間 − 樫井川の合戦、塙団右衛門出師 ・太鼓ぐるり − 牡丹に唐獅子 岡田北組やぐら新調記念誌一部 |
(泉州物語 平成21年11月号 p.1〜p.8より引用) |
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ちなみに、背表紙に取材協力として当サイト名が掲載されてます。 (^_^)v p.8の岡田西組の彫物図柄解説において、当サイトの内容が掲載されたのです。ただ…、アドレスがトップページのアドレスじゃなくて、目次ページのアドレスになってるのが非常に残念ですが…。 (^^ゞ |